人気ブログランキング | 話題のタグを見る
誰にでもできる小旅行インド篇 TEXT+PHOTO by 伊勢谷友介

PROLOGUE 伊勢谷友介が“旅に出た理由”とは。

PROLOGUE 伊勢谷友介が“旅に出た理由”とは。_b0071708_2123923.jpg

「日本では開かなかった毛穴が開いた」
 伊勢谷友介は、インドの旅をそう振り返る。彼がインドを訪れたのは2003年12月28日から翌年1月15日までの18日間。なぜ、あの時インドだったのか。旅立った日から2年以上経った今、出発時は明確な答えが見つからなかったが、その答えは、ある青年との出会いをきっかけに、彼は手に入れることになった。
「インドに行った人はみんな“インドに呼ばれて行った”とか“すべてがショッキングで混沌としている”とか言うんです。俺はそれに対して“そんなわけないだろう”“同じ人が住んでいるんだから”と思っていました。だって、日本でも、蓋を開けてみたらエライことになっているでしょう。ただ見えないようにオブラートに包んで隠して、きれいに繕うことが上手いだけなんだと思う」
 伊勢谷の2003年は、そのオブラートに足を絡み取られてしまったのかもしれない。
「二つの大作映画に出演して、体力的にも精神的も今までで一番しんどい思いをしました。演技のことも現場の雰囲気も掴みきれなかった。それまで、俳優としてはすごく恵まれていたと思うし、一生に一度はやってみたかったヒーローの役もいただいた。でも、自分の監督作の『カクト』の公開がちょうどその時に重なったり、さらにケガもしてしまって、いろんなものが溜まっていたんだと思います」
 こうして、伊勢谷は海外では初となる一人旅へと出掛けることになった。インドのことは、特に勉強をしなかった。こうなったら、どこまでも流されてみよう。そう思ったという。アラビア海に面した都市で、イギリス植民地時代は貿易の拠点として栄えムンバイにまずは降り立った。パンツは履かないこと、時計はしないこと。この2つが今回の旅で彼が自分に課した規則だった。
「感動のすべてが違うんですよね。いちいち驚いたりショックを受けていました。温度も湿度も高度も違うから、日本が僕らにとってアベレージポイントだとすると、その上の、飛び上がるくらいのことが毎日ありました。それに、インドへ行くことは俺の中では挑戦でもあって、力が入っているところもあった。だから、日本では全く日記を書いたりはしないのに、それをちゃんと残しておきたくて写真と日記で記録をしたんです」
 撮り終えた膨大なフィルムを抱え、彼は予定通りの日に帰国した。しかし、すぐには俳優活動やアートディレクション、フィルムメーカーとしての活動には戻らなかった。彼は、ウィーン、ボスニア、ブルガリア、トルコ、メキシコと、次々に旅を続けたのだ。
「男の人って、失恋すると結構長く引きずるじゃないですか。そういう感じですね」
 そう言って彼は笑ったが、旅は次第に癒しや楽しみとしてではなく、反動として表現者・伊勢谷友介に強く結びついていった。
「だんだん脅迫観念の方が強くなっていきました。今やらないと俳優として終わってしまうのではないか、と思うようになったんです。だから去年はすごく頑張れました。それで今度は、俳優をやったらやったで、映画を作らないとやばい! と思ってしまって(笑)」
 去年撮影された出演作が立て続けに公開されている現在、彼は脚本家・映画監督としての活動に入っている。演じるか、撮るか、何もしないか。その極端なところでしか表現できない不器用さが彼の魅力であり、同時に、旅においては、その土地のすべてを受け入れるための“ゼロ地点”を作り出しているのかもしれない。創作活動が本格化する前にと訪れたミャンマーの写真を見せながら、彼はこう言った。
「旅は、その最中には楽しさや面白さの実感がないんです。でも、帰ってきた瞬間に急に湧いてくる」
 ひとりで国境を超えた日のこと。今となっては形のない“実感”としてだけ残るあの日のことを、今また思い出してみてはどうだろうか。なぜあの時行き先はインドでなければならなかったのか、今だったら、その理由が分かるかもしれない。我々は、その日記を彼から預かることにした。
by iseya-yusuke | 2006-06-20 00:03 | Trackback(1)
Tracked from acomiの心地いい暮らし at 2006-08-31 10:03
タイトル : *まっすぐの*  2006,8,30
自分を信じたくて、ハチミツとクローバーを観に行った  2回目の映画館は 落ち着いて前とは違うみかたでみられた気がする 自信があるときの、元気でやることがいっぱいあって前に進むことにわくわくするあのきもち でも そんな自分にも気づいていないんじゃないかってくらいの、頭でなんて何にも考えていなんじゃないかってくらいにまっすぐの、そこにいるアーティストたちを色鮮やかに目の当たりにして 心がくうっとして・・・してからそして、まっすぐになっていく気がした 帰りに寄った本屋さんで、辻仁成の青...... more




ページの上へ